ザンビアにおける原虫性感染症およびリケッチア症の分子疫学的調査

<背景>
 ヒトに感染するアフリカトリパノソーマ原虫には2種類が知られている。Trypanosoma brucei (T. b.) rhodesienseは主に東~南部アフリカに分布し急性の感染を起こすのに対し、T. b. gambienseは西~中央アフリカに分布し、慢性の感染症を起す。どちらの亜種でも最終的には脳脊髄液中で原虫が増殖し重度の中枢神経系の障害を起こし、治療を施さない場合、死に至る。ザンビアではT. b. rhodesienseが分布しているが、近年の状況については、確定診断が充分なされておらず正確な情報が不足していた。

<活動>
 2005年以来、HATの探索をザンビア国内で展開している。その過程で、2009年、2011年にはマラリアと考えられ治療されていた患者の末梢血液にトリパノソーマ原虫が検出され、人血清抵抗性因子(SRA)遺伝子の存在からT. b. rhodesienseと同定された。これらの情報に基づいて患者居住地域(Chama、Lower Zambezi周辺地域)での調査を開始した。これらの地域ではトラップを設置、ツェツェバエを捕獲し、全DNAを抽出し、PCRあるいはLAMPで原虫遺伝子検索を行っている。さらに、家畜(ウシ、ヒツジ)の血液DNAを収集し原虫保有状況の調査を実施している。同時にマウスを用いた原虫分離を試み、ヒトならびにウシ血液、ツェツェバエ唾液腺から数株を樹立している。これらの分離株の一部はT. b. rhodesienseの特徴であるSRAを保有していることが確認されている。今後、HAT発生地域での原虫保有動物、特に野生動物の探索を実施する計画である。また、レプトスピラ、マダニが保有するリケッチアの検索も実施している。

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