鳥インフルエンザウイルス調査

<背景>
 A型インフルエンザウイルスはヒトを含む多くの哺乳類および鳥類に感染する。A 型インフルエンザウイルスは2種類のスパイク蛋白質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原性によって、HAは16種類(H1-H16)、NAは9 種類(N1-N9)の組み合わせからなる「亜型」に分類されており、様々な亜型の ウイルスがA型インフルエンザウイルスの自然宿主である野生の水禽から分離されている。これらのウイルスの一部が他の野生動物、家禽、家畜あるいはヒトに伝播し、病原体となる。特にH5およびH7亜型のウイルスの中には、鳥類に致死的な感染症をひきおこす高病原性鳥インフルエンザウイルスとなるものがある。低病原性ウイルスは呼吸器や消化器などの局所感染にとどまるが、高病原性ウイルスは致死的な全身感染を引き起こす。近年、鳥インフルエンザウイルス、特にH5N1亜型のウイルスがヒトに感染してパンデミックウイルスとなる可能性が危惧されている。野生水禽は、このウイルスを運ぶキャリアーとなる可能性があるので、アフリカにおける野生水禽、特に渡り鳥におけるウイルス保有実態調査の必要性に迫られている。

<活動>
 2006年から2010年のロッキンバー国立公園の調査で、野生水禽から100個以上の糞便サンプルを採取し、これまでに13株のA型インフルエンザウイルスを、ペリカン、ガンおよびカモから分離した。それらのウイルスのHA亜型は、H3, H4, H6, H9, H11であった。遺伝子の進化系統解析によって、それらのウイルスは ユーラシア系統に属することが分かった。さらに、これらのウイルスの一部は南アフリカの家禽に流行している鳥インフルエンザウイルスの遺伝子と近縁であったことから、南部アフリカにおいて野生水禽と家禽の間でウイルスの伝播が起こったことが示唆される。今後も南部アフリカにおける野生水禽および家禽が保有する鳥インフルエンザウイルスの継続的なモニタリングが必要である。

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